インドの仏教
読者の方からのお問い合わせで、
インドは仏教の発祥地でありながら、なぜ、現在、インドの
仏教徒数が僅少であるのかというお訊ねです。
非常に奥の深い内容ですので、ここでは、
「私はこんな風に聞いたことがあるよ....」という程度で
軽く押さえていただきたいと思います。
インド仏教を衰退へと導いた歴史:
西暦千年の下半期において、仏教が衰退していった理由は判明していません。
12世紀には、イスラム教徒がインド征服を開始し、
その間、仏教僧院の数は大幅に減少しました。
仏教はいったんは、インド全土へと広わたったものの、
勢力を有したのは発祥地においてのみです。
学識者達は、僧院はインドの日常生活を超然したものになると信じていました。
数百年の仏教支援の結果、僧院は寄付により財を蓄え、
僧院内での生活はかなり裕福なものと化しました。
財を成した僧院は、僧侶志願者を選択するようになったそうです。
やがて、インドの日常において、変遷を辿ってきたヒンズー教と
仏教の相違が薄れ始めました。
一般的ヒンズー教徒は、仏陀(釈尊)とはヒンズー教の神々の
ひとりであると捉えていました。
事実、最終的には、ヒンズー教は仏陀をヴィシュヌ神の化身、
いわゆるアバター (avatar) と解釈するに及びました。
(* ヴィシュヌ神の化身としてクリシュナは有名です。)
仏教徒は、別個のコミュニティを形成し、インドの日常行事等に
強く関わっているヒンズー教と共存することはありませんでした。
1192年、イスラム教徒がインドへの征服を始め、
イスラム教への改宗を試みました。
土着宗教への抑圧は、その手段の一部でした。
しかし、ヒンズー教はインドの日常生活に非常に
根強く密着しており、イスラム教徒の努力は失敗に終わりました。
一方、仏教に対しては、僧院の破壊、
僧侶の殺害や追放を行ったため、
仏教徒の残存者はインドから姿を消していきました。
1192年以降、今日に至るまで、仏教は誕生したインドの地に、
まるで生まれたものが土に帰るように眠ったままです。
参考資料:
ワシントン州立大学オンライン リソース(英語)