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パンチャタントラ 第三章 - カラスとフクロウ
メインストーリのあらすじ
昔々、インドのある町に、たくさんのカラスが
大きな菩提樹に住んでいました。 その木には数え切れないほどに立派な枝葉が育っていました。 カラスの王さまは、ヒナたちを守るために頑丈な巣を作りました。 フクロウたちもカラスの住処の近くの洞窟に 住んでいました。 フクロウにも王さまがいて、強い軍隊を作っていました。 フクロウの王さまは、菩提樹をいつも見張っていました。 毎晩、木の外に出てくるカラスを殺すためです。 少しずつでしたが、ついには、大勢のカラスを殺してしまいました。 危機に陥ったカラスの王さまは、部下たちを呼び集め、 フクロウと戦う策略を提案させました。 合計で6つ提案されました。 そして、その中から最善と思われる戦略を選ぶことにしました。 最初の提案は、フクロウたちと歩み寄るプランでした。 一旦、親しくなり敵が油断した隙を狙う策略でした。 「強い敵にはひれ伏しておいて、隙を見て攻撃しよう。 力も財も友好関係もなんら戦利が期待できない状況では 戦争をすべきではない。」という友好偽りの策が第1の提案でした。 第2の提案は、フクロウを策略にかけて陥れようというものでした。 フクロウたちと仲良くできるはずがない。 隙を狙って背後から刺されるようなものだ。 不誠実で少し頭の弱い敵との戦いは 圧勝するに決まっている。 友好なんて持ち出したら、逆に闘争心をあおってしまうだけである、 というものでした。 3番目は、「私たちカラスは決して強くはないが、 邪悪な集団ではありません。 敵の様子をうかがって逃げましょう。」 4番目の提案は、皆が一丸となって戦い、 カラスの王さまが砦から指示を与える策でした。 「逃げてしまえば、毒歯のないコブラのようなもの。 水中のクロコダイルは像のような巨体すら殺せるのです」 「力をあわせれば、火をおこす風になれる。 王さまは自分の位置に留まり、 集めた仲間たちを後方から支援してください。」 5番目は4番目の戦略に似ていました。 「王さまは砦に留まり、敵よりも強い味方を探してください。」 カラス王は、5つの戦略を聞くと、一番の長老である相談役に 意見を尋ねた。 長老が言うには、 「王さま、二枚舌を使って敵対関係を終わらせようではありませんか。 そして、王座を保ってください。」 「長老、しかし、我々にはその手立てがないではないか。」 「いいえ、王さま。 決して難しいものではありません。 スパイを潜入させフクロウたちを仲間割れさせるのです。」 カラスの王さまは、これには返事をせず、 逆に長老に質問しました。 「ところで長老、そもそも、カラスとフクロウが このような敵対関係になった原因が何であるか 知っていたら教えてくれないか。」 「それは遠い昔のことです。 ジャングルには白鳥、オウム、鶴、ウグイス、フクロウ、 孔雀、鳩、キジ、つばめ、カラスと、あらゆる鳥たちが住んでいました。 ある日、皆が集まって会議をしました。 王が職務に無頓着のあまり、密猟者に対抗する策を 講じることもせず、治安が維持できない不安を訴えました。 誰もが非常に不安に思っていたので、 新しい王を選び出すことにしました。 そこで選ばれたのがフクロウだったのです。 フクロウの戴冠式の時、ちょうど一羽のカラスがやってきて、 いったい何事ですかと訊ねました。 事の始終を知ったそのカラスが、 『フクロウは、意地悪で醜い鳥なのに、 どうしてこんなに大勢の綺麗な鳥たちの中から、 フクロウなんかを王にするのですか。』とカラスが反対しました。 それがことのはじまりでした。」 |
この話しをもとに、第三章の中に小話しが展開されていきます。 ここでの教訓は、どんなに緊密な友好関係になっても 過去において敵であったものを決して信じることはできない、です。 |
* 当プロジェクトには、文化人類学や児童文学等の学術研究や専門家は一切関与しておりません。
* 参照: Panchatantra.org、G.カルカーニ氏、ピッツバーグ大学アーカイブ、その他多数のインド国ムンバイ市ご近所様