空港到着ロビーに出た途端に、今までに経験したことのない、
湿気と暑さの膜が身体じゅうを覆いました。
日本を出発したのが5月初旬のさわやかな時節だった事も重なって、
気温差と湿気をいっそう強く感じたかも知れません。
息の詰まるような暑さと湿気だけではなく、
ロビーの外でたむろしている黒アリの人だかりからも
充分過ぎるほど感じられました。
「夜中というのにこの人出はいったい何?」
度肝を抜かした私には、たった一人でその人込みの中に
立ち入っていく勇気は全く無く、
そこから一刻も早く救出されることを祈るだけでした。
どの人も顔の彫りが深く、まつげは「くるっ」と
カールするほど長く、髭を蓄えた顔。
インド人を見慣れていない私には
誰が誰だか見分けがつきません。
大勢のインド人の中にぽつねんとたたずんでいる
風体の違う私は、勿論、直ぐに出迎えの人に
見つけ出してもらえました。
プロジェクトマネージャの一人で後に大変お世話に
なる人ですが、数日後には日本へ転勤する人でした。
インドでたった一人知り合いになったばかりの人が
数日後にはもういなくなると知った途端、
再びこの世の中にひとり放り出されたような孤独感に
陥りました。